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南極の夏に思う
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昨夜から吹き始めた強風は夜中にピークを迎え、午後には回復するだろうという読みを見事に裏切ってくれて、夕方になっても衰えず、5時を過ぎても平均風速18m/sが続いている。
氷床掘削を終え、内陸旅行の出発拠点であるS16に戻ったパーティーは、昭和基地を目前に控えて停滞中。
明日天候が回復すれば「しらせ」のヘリがピックアップしてくれて、約1ヵ月半ぶりに元気な姿を見せてくれるはずだ。
2月の声を聞くと天候が悪化して、思うように作業が進まないのはいつものことだが、今年もご他聞にもれず計ったように天気が崩れる日が増えてきた。
比較的天候に恵まれた夏もそろそろ終わる。
12月23日に昭和基地に入って約1ヵ月半。
日本から「しらせ」に積んで持ち込んだ燃料、食料、物資の輸送、夏にしかできない建築作業、各部門ごとの56次隊からの引継ぎなどなど、今年の夏もめまぐるしく過ぎようとしている。
1年間昭和基地を守り抜いた56次隊の協力を得て、何とか57次隊の越冬の目処もついた。
2月1日に「越冬交代式」を終えて、57次越冬隊が昭和基地の管理と運営の受け取った。
越冬交代後も基地に残って引継ぎや作業支援にあたってくれている56次隊の隊員や、引き続き残りの夏作業に勤しむ57次夏隊員とも、あと1週間もすればお別れとなる。

猫の手も借りたいほど忙しい現場に、猫の手くらいにはなれるかなと思って何度か入ってみたものの、作業の後に夏宿舎に戻ってみるとしこたまメールが溜まっていたり、56次越冬隊長から問い合わせの電話がかかっていたりと事後処理が大変だったことがあった。
昭和基地では同時にいくつもの現場が動き、野外にも複数のパーティーが調査に出かけ、「しらせ」に残っている隊員との調整があったりと、暇そうにみえる隊長業が実はそれほど暇ではないことを初めて実感した。
これはおちおち現場に入っていられないと悟ってからは、現場に出たい、野外に行きたいという気持ちを抑えてマネージメントに徹し、全体がうまく回るように気を配ることにした。
「過去2回の越冬で、野外には一生分行ったから」と負け惜しみを言いながら。
うまくいったかどうかはわからなけど。

そんなこんなで慌しく過ぎる夏に思ったのは、南極の美しさだ。
風景や景色が美しいというのは当たり前だが、今年改めて強く思ったのは人の美しさ。
数名のプロが多数の素人を指揮して、コンクリートを練り、型枠に流し込み、建物の基礎を作る。
さらに鉄骨を組み、構造物を仕上げていく。
へとへと、くたくたになりながらも、親方の指示通り作業が進んでいく。
素人とはいえ、違った分野でのプロの集まりだけあって、要領の飲み込みは早く、目の前の課題に果敢に臨んでいる姿は感動的だった。
これまで過ごした南極の夏は、自分自身が現場に入り込んでいたために当たり前に思っていたが、少し距離を置いて眺めてみると改めて素晴らしさに気づかされることが多い。
建築現場に限らず、1ヶ月以上もテント生活を続けながら調査に取り組んだ隊員や、少しの時間をみつけてはコツコツと課題をこなしていく隊員も、疲れたと言いながら目を輝かせている姿はやはり美しいと思う。
そんな隊員の疲れを少しでも癒そうと美味しい食事を提供し続けてくれる調理隊員や少しの怪我でもすぐに対応してくれる医療隊員、通信室に篭りっきりでコミュニケーションの要となってくれる通信隊員、設備、車両、機械のメンテナンスに地道に取り組む機械隊員などなど、自分の立場をきちんと理解したうえで、職務を全うしようとする姿も美しい。

そんなことを思い、気づかされた夏も終わろうとしている。

夏隊と56次隊を乗せた「しらせ」が去ると、いよいよ30人の越冬生活が始まる。
この夏に感じた美しさを忘れず、それ以上に美しいと思える越冬にしたいと強く思う。

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昭和基地の夏の風物詩、朝礼時のラジオ体操。

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大型大気レーダーの保守を行なうには、過酷な砂まきをしてまずは雪を融かさなければならない。

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なれない作業は慎重に。

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現場監督の指揮の下、素人集団が風力発電装置を組み上げていく。

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完成した風力発電機2号機の上から見た昭和基地主要部。

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今年のコンクリートプラントの名前は「ファクトリー粉57(こなごな)」

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新設する基本観測棟の土台工事も何とか間に合った。

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越冬隊は56次隊から消防のノウハウも引き継ぐ。

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昨年56次隊が建設した第2車庫兼ヘリ格納庫のスロープ工事。

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悪天を避けるため、完成したばかりの土間を利用して観測隊ヘリを格納庫に入れた。

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観測隊がチャーターしたヘリのパイロットと整備士。フットワークが軽く、大いに助けられた。

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野外調査の物資集積場所。天候に恵まれて、予定していた調査の9割以上を行なうことができた。

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1人当たり約1トンになる越冬隊の食料の搬入風景。オレンジ色の服を着た「しらせ」の乗組員が支援に来てくれた。

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そして2月1日の越冬交代式。この後両隊の隊員が握手を交わしながら立ち位置を交代する。

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昭和基地での仕事を終えた夏隊員は、順次「しらせ」に引き上げる。

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名残惜しい瞬間だ。

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視程は悪くないが、夕方まで風が収まらず、昨夜初めて出した「外出注意令」を解除できない。
もうすぐ冬が始まる。
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